AI動画の見分け方

まずは結論から!

AI動画の見分け方

SNSの海外動画は全てAIだと疑ってかかる

感情に流されず冷静になって細かいところを観察する

背景の人物や建物の作り、家具、掲示物、影の落ち方など細かな点の違和感を探す

本当に存在する人物・場所・団体・取組みであるかを検索する、ChatGPTなどのAIで検証する

先日、Xで次のような文章と動画が拡散されていました。

人間がワンコを選び里親になるのではなく、
里親になりたい人達を集めて、
ワンコが里親になって欲しい人たちを選ぶという新しい試みを始めた保護施設

この新しい試みで、里親たちにも新たな喜びが生まれ、
ワンコへの愛情と絆が深まった…

この文章とともに投稿された日本語の転載ポストはこちらです。
https://x.com/fuhentetsu/status/1999126847142195455?s=20

犬が並んだ人たちの前を歩き、ある一人の前でピタッと止まり、選ばれた人たちが一斉に泣き出す——
そんな「感動的な里親の瞬間」として演出された動画でした。

この投稿には 12万件以上のいいね がつき、
コメント欄は

「感動した」
「これが本来の姿」

といった絶賛の声で埋まっています。

一方で、
AIでは?
本当に実在する取り組みなのか?
という疑問は、ほとんど見当たりませんでした。

元の英語圏ポストでは「AIでは?」という指摘が出ている

この動画の元になった英語圏の投稿はこちらです。
https://x.com/heyitsmeCarolyn/status/1998860831489155250?s=20

こちらのコメント欄には、

「While watching: this better not be AI」
「It’s a shame this is AI, because it’s genuinely beautiful」
「Looks like this viral video is AI-generated」

といった、
AI生成を疑う・指摘する声が多く見られます

つまり、

・英語圏では「これは本物か?」という視点が入り
・日本語圏では「感動した」という受け止めが多く拡散されている

この温度差が、とても気になりました。
決して日本人が感化されやすいということではなく、海外の動画だからではないか?と考えています。


そもそも犬は、そんなに人間の思い通りに動かない

私がこの動画に強い違和感を覚えた理由は、とても単純です。
海外の事はわからないけど、現実の犬は知っているからです。

例えば、
とやまソフトセンターが公開している狂犬病予防注射の動画があります。
めちゃくちゃかわいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=x0pIScKzwAk

ここに映っている犬たちは、

・暴れる
・逃げようとする
・固まる
・状況を理解できない
・注射の重要性や意味を理解できない

とにかく行動がバラバラです。
これが「本物の犬」だと思っています。

犬は「里親を選ぶ立場」を理解できない

拡散された動画の犬は

「自分は今、里親を選ぶ側である」
「この中から誰か一人を選ばなければならない」
「お年寄りなどの弱者に配慮しなければならない」

と理解して行動しているように感じます。

ご存知のように、現実の犬はこうした抽象的な役割や制度の理解 はできません。

クンクン嗅ぐ
→ 立ち止まる
→ 離れる
→ 別の匂いへ行く

この連続です。

動画のように一直線に歩き、迷いなく止まり、“決断した”かのように見える行動は、人間側が物語として意味づけて演出している何よりの証拠となっていると感じます。

もし犬がそんな理解力を持っているなら、注射であんなに暴れないはずです。
海外の犬だけとんでもなく賢い…なんてことはないと思います。

「訓練された犬が特定の人を見つける」「飼い犬が飼い主を見つける」のとは前提が違うのに、「見つける」という行動だけがピックアップされ脳内で正当化される

警察犬や探索犬が特定の人物を見つけられるのは事実です。

ただしそれは、

・匂いを記憶している
・訓練されたタスク
・報酬と結びついた行動

という 照合(マッチング)能力 の話であって、自由意思による「選択」ではありません。
今回の動画とは、前提がまったく違います。

しかしなんとなくこの感動ストーリーが本物であって欲しいとの思いから「自分で里親を見つける」という行動が可能なように認知してしまうのではと考察しました。


前置きがながくなりましたが、ここからが本題です。

ここまで見てきたように、AI生成動画は「人間の都合の良いように」「一見もっともらしく」「感動的」に作られており、時に人間の認知を歪めます。
では、実際にどうやって見分ければいいのか。
私なりに、今回の件から考えたポイントをまとめます。

SNSの海外動画は全てAIだと疑ってかかる

感情に流されず冷静になって細かいところを観察する

背景の人物や建物の作り、家具、掲示物、影の落ち方など細かな点の違和感を探す

本当に存在する人物・場所・団体・取組みであるかを検索する、ChatGPTなどのAIで検証する

海外の感動動画は「全てAI」だと思ってかかるべし

先ほどの動画では海外の方はこれがAI生成だと直感的に見抜いています。
自分が暮らす日常とは違うという違和感を感じたのではと思います。
もしこれが日本の保護施設を舞台にした動画だったら、私たちも違和感を感じられたのではないでしょうか。

例えば、

・施設の壁や内装、家具、照明が不自然ではないか
・人の立ち位置や距離感がおかしくないか
・表情がどこか不揃い、あるいは揃いすぎていないか
・服装や雰囲気が、現実の日本と噛み合っているか

そんな、視覚的な違和感を拾う人が、もっと出てきたように思います。

けれど舞台が「海外」になると

「海外なら、こういう感じなのかもしれない」
「進んでいる国では、これが普通なのかもしれない」

知らない場所だからこそ、細部のズレに気づきにくく、「こんなものなんだ」とそのまま受け取ってしまうと考えます。
海外の動画はだまされやすい、と身構えておくことが重要です。

AIは「こうだったらいいな」を違和感なく差し出してくることを理解し、感情をコントロールされない。

AIが作るのは、現実そのものではなく、人が期待しているイメージです。

「保護犬がまっすぐお年寄りを選ぶ」

まるで映画のワンシーンのような「こうだったらいいな」と多くの人が共感する光景。
AIはそれを、映像として、しかも“それらしく”事実かのように差し出してくる。

海外という距離感も相まって、そのイメージは疑われることなく、きれいな物語として受け入れられてしまうと考えています。

感動する音楽が入っている場合は音楽を消してみるのも手です。感情をコントロールされづらくなります。

メインの人物ではなく、背景の人物や建物を見る

感動動画では、どうしても「犬」や「選ばれた人」といった物語の中心に目が行きがちです。
そこであえて、主役ではない人たちを見てみます。手品と一緒ですね。

例えば、

・背景にいる人たちの表情が、どこか似通っていないか
・笑う/泣く/驚く、といった動きが不自然にそろっていないか
・服装や雰囲気に、妙な均一感がないか

AI生成の映像では、背景の人物が「個性のない群衆」になりがちです。

また、

・複数人が同時に同じ動きをする
・一瞬のズレや迷いがない
・表情が貼り付いたように固定されている

といった特徴が見えることもあります。

現実の人間は、もう少しバラバラで、間があり、統一感がありません。
現代だとひとりくらいはスマホをいじっていそうなものですが、それもありません。

ほとんど動かない背景のみなさん。服装も似たような感じ。

こちらもほとんど動かない。服装も似た感じ。しかも天井のライトが多すぎ!ポスターも多すぎ!

このように背景のデティールも注意深く見ます。
一時停止してよく見るとおかしな点がどんどんみつかりました。

ライトが多すぎる

影の落ち方がなんかおかしい。

意味不明な家具

床に落ちたスポットライトの光が四角い

疑いの目を持ってみれば異変に気が付きますが、感動している状態では全く違和感なく見れてしまうのがやっかいなところです。

「感情が動かされた瞬間」に気づく

もう一つ大事なのは、自分の感情の動きに気づくことです。

・驚いた
・泣きそうになった
・切なくなった
・「いい話だな」と思った

それ自体は悪いことではありません。

ただ、

「こうだったらいいな」
「こんな世界があったら素敵だな」

という願望が満たされた感覚が強いときほど、人は事実確認を後回しにしがちです。

その感覚に気づいたら、いったん一歩立ち止まり、

・これは実在の出来事なのか
・どこの国の、どの団体の話なのか
・他の情報源はあるのか

を検索して確認してみる。

最近であれば、ChatGPTなどに「この動画や話は実在しますか?」と聞いてみるだけでも、ヒントは得られます。


AI動画は詐欺や悪徳商法、政治的な扇動に使われる可能性もあります

こうした感動動画が拡散され、「いい話だったね」で終わる分には、大きな問題にはならないかもしれません。

ただ、今後は、

・感動動画と一緒に募金を集める
・詐欺や宗教、悪徳商法の入り口に使われる
・世の中の空気を扇動し、政治的な方向づけに利用される

といったケースが出てこないとは言い切れないと感じています。

本人に悪意がなくても、

「感動したから」
「いい話だから」

という理由で拡散することで、結果的に詐欺やテロ行為の片棒を担いでしまう可能性もあります。


AI動画の見分け方まとめ

感動動画は、疑うくらいでちょうどいい

感動する心を持つことと、疑う視点を持つことは、両立できます。
フィクションだと分かった上で「よくできた物語」として楽しむ分には、何も問題はありません。

ただ、それが事実のような顔をして拡散されるとき、話は少し厄介になります。

特にこれからは、感動動画は、まずAIかもしれないと思って見るくらいで、ちょうどいいのかもしれません。

疑うことは、冷たいことでも、意地悪でもありません。

「本当にそうなのか?」と一度立ち止まることが、誰かを守ることにつながる場面も、きっと増えていくはずです。

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